H・G・ウエルズ(ジャストシステム)
1888年(芸術崇拝)のから1921年(消えた旧人類)の間に書かれた短編が十編が収録されている。解説で「少し毛色の違ったウエルズ像を紹介することを目指した」ということで内容はバラエティに富んでいる。
ウォルコート
クリスマスイブにウォルコート邸のエドウィンを訪ねた従兄のクロード、ヴィッツリーの2人は一年前に消えたエドウィンの兄、ハリーの話をしながらトランプをしている。
マントルピースの揺らめく炎が照らす、ブロンズ像のサタン、半身半獣のサテュロス、鎌をかまえた時の死に神、口がきけないオウムのポリーなど、おどろおどろしい状況設定。
ある無情な恋物語
詩人、オウブリ・ヴェールの不倫の話。愛情が苦難にさらされて初めて文学的実りを得られる、と確信しているオウブリ・ヴェールはテニスで知り合った少女、ミス・ミセスと恋に落ちる。
「不倫は強欲の次に並ぶが、飲酒癖よりはましである」という言葉が出てくるが、飲酒癖が一番ひどいのかしら。。
美しい服
母親に、美しい服を仕立ててもらった小柄な男の話。
月の輝く奇妙な夜に、その服を着てこっそり出かけてゆく。
空中飛行家
1895年に書かれた予言もの。
1903年のライト兄弟、初飛行より8年前の作品。
ウスター・パークの巨大な鉄の架台。発明狂モンソンの飛ぶ機械を巡る物語。
世界終末戦争の悪夢
列車に乗ってきた男が、語る現実と見分けがつかない夢の世界の話。
イカロスになりそこねた男
こちらも科学予言もの、1901年作品。
空を飛ぶことに生涯をかけた、発明家フィルマーの話、かな?
ダチョウの売買
ダイヤモンドをダチョウに飲み込まれた、モヒニ・パディシャ、そのダチョウを買い取ったユーラシア人のポター。ダチョウに高額の値が付いてゆく。
芸術崇拝
芸術家のアレックス。イザベルとの幸せな日々が画家としての霊感を鈍らせていると思い始める。絵の中にあられた悪魔と取引をするが。
消えた旧人類
ネアンデルタール人とクロマニヨン人の衝突を描き、過去の人類について考察している。物語の最後に「原始時代の失われた記憶がよみがえる日が来るかもしれない」といった事が書かれているところが興味深い。
ウェイドの正体
臆病者のウェイドが、マニングトリー先生に臆病が直る薬をもらい、大成するが、17年後に「あれはただの蒸留水だ」と打ち明けられる。
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