2005年8月28日日曜日

アメリカ音楽ルーツ・ガイド(ジャンル解説&CDガイド350)

鈴木 カツ(音楽之友社、2000/07)

レコードに刻まれた歴史をひもとき、アメリカ音楽のルーツを探る趣旨の本書。
自分自身、音楽好きで様々なジャンルの音楽を聴いているが、あまりその発祥については関心がなかったが、読んでみると面白い。

本書では基本68ジャンルについて解説しているが、基本ジャンルが68もあるとは。。
内容(「MARC」データベースより)
アメリカン・ミュージックの基本68ジャンルを解説し、おすすめディスクを紹介。CDを買うとき、聴くとき、音楽雑誌を読むとき、すぐに役立つ知識が満載の「ファンのための音楽事典」。


執筆陣
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今澤 俊夫
大鷹 俊一
小尾 隆
木村 ユタカ
小出 斉
佐々木 健一
鈴木 カツ
鈴木 啓志
田中 凛太郎
津田 和久
土橋 一夫
ハスキー 中川
中山 義雄
文屋 章
山崎 直也

2005年8月27日土曜日

gift

古川 日出男(集英社、2004/10)

「小説すばる」2001年6月号から2003年2月号にかけて不定期連載されたシリーズ「かわいい壊れた神」からの16篇に書き下ろし3篇を加えた19編からなる掌編集。
それぞれのタイプの違う作品で独特の世界に引き込まれる。
時々取り出して読みたい本。

収録作品
ラブ1からラブ3
あたしはあたしの映像のなかににいる
静かな歌
オトヤ君
夏が、空に、泳いで
台場国、建つ
低い世界
ショッパーズあるいはホッパーズあるいは君のレプリカ
小さな光の場所
鳥男の恐怖
光の速度で祈っている
アルパカ計画

アンケート
ベイビー・バスト、ベイビー・ブーム悪いシミュレーション
天使編
さよなら神様
ぼくは音楽を聴きながら死ぬ
生春巻き占い

2005年8月26日金曜日

マンガ嫌韓流

山野 車輪(晋遊舎、2005/07)

本書カバー裏にある「マスコミが隠しているもう一つの韓流がある」の通り、アマゾン、紀伊国屋書店などでベスト1にもかかわらず、マスコミに黙殺されているという事実に興味を持ち読んだ。

漫画というよりは読み物として。
日韓共催ワールドカップの裏側、戦後補償問題、在日韓 国・朝鮮人の来歴、日本文化を盗む韓国、反日マスコミの脅威、ハングルと韓国人、外国人参政権の問題、日韓併合の真実、日本領侵略-竹島問題、日韓友好へ の道、といったテーマを主人公の高校生・沖鮎 要らが学びながら解説する。
読むと反韓というよりは反日日本人(メディア)の存在の方が問題と分かる。

WILLの編集日誌での作者・山野氏の話「まだ漫画になっていないテーマを考えているときに、2chで盛り上がっていた反韓をテーマにしようと思った」との発言を読んだ。
元々、歴史認識ありきで書き出したのではないことについてはザンネン。
これはフィクションではすまない。既に「続編」に取りかかっているとのことだが、ヒットを狙ってテーマを見失わないことを切に願う。

それこそマスコミに足下をすくわれ折角と言うよりやっと日本人が歴史に関心を持ち出しているこの芽を摘んではイケナイ。

2005年8月25日木曜日

ボディ・アンド・ソウル

古川 日出男(双葉社、2004/08)

主人公フルカワヒデオが現存するカルチャーについて徹底的に思索し、言及することにより現代の「東京」と対話する作品。ノンフィクションの境界を破る、まったく新しいタイプの小説。(双葉社のサイトから)
たまたま主人公が「フルカワヒデオ」なので小説家「古川 日出男」をイメージしながら読んでしまうが、果たしてその時点で本書の術中にはまってしまっているのかもしれない。

冒頭、自殺してカラダからトンズラこいた「精神」を増悪する「肉体・カラダ」の僕の視点で始まる。
自分自身のカラダと精神を様々な状況に入れたり出したりしているような試行的な「ことば」で綴られている。

「偶然に意味を見てしまうタイプは見てしまうの。あ・ぶ・な・い・の。」という郡司珠子のことば通り、あえて危ない方を選ぶフルカワヒデオが気持ちいい。

2005年8月18日木曜日

アビシニアン(abyssinian)

古川 日出男(幻冬舎、2000/7/10)

「文字」という有限で制約の多いコミュニケーションの手段を捨て、リアルな感覚を研ぎ澄ますことによって得られる本当の理解をもとめる、ストイックな話。

出版社/著者からの内容紹介
「あなたには痛みがある」そう言った彼女は字が読めなかった。ぼくは激痛の発作におびえながらも急いで書かなければならない。僕と彼女の愛についての文章を。気高く美しい者たちの恋愛小説。
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古川日出男の綴る文章は面白い。
昔自分の中に在って今はどこかに仕舞い込んでしまった心搏が聞こえるような気がする。


あらすじ
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他者との協調ができないその小学生は、技術としての「ことば」を書物に求めるが、不足を感じ、ことばを超えた感覚による伝達を実践した。
そしてそれを猫から学んだ。
その少女は、親の都合で手放す事になった、元飼い猫「アビシニアン」との再会のため中学の卒業式後、過去と過去の自分を捨て公園に向かう。
4年間「アビシニアン」と一緒に猫として生きた少女は、文字を葬り去り、文盲となって森羅万象とともに新生を果たす。
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顔写真のスクラップで膨れあがったシステム手帳にシナリオを書き込む大学生。
原因不明の発作を持つこの大学生は、ダイニング・バー「猫舌」で「顔のない少年」の物語をエンマに語る。
エンマに「シバ」と名付けられた大学生は、物語を語ることによって二人の間でストーリーが養われ境界がなくなっていく、と感じる。
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「猫舌」のオーナー西マユコは、我が子の墓の前で蓮華を手に佇む文字を捨てた少女に出会う。
マユコは、安らぎを与えてくれる少女にエンマと名付ける。
家族を失ったマユコと全てを捨てた少女は、家族となり姉妹としての生活が始まる。
恐怖のシンボルが日付だったマユコは、エンマと暮らすことで文字を忘れるように日にちを忘れた。

2005年8月12日金曜日

サウンドトラック

古川 日出男(集英社、2003.9.10)

小笠原諸島の無人島に漂着した2人の子供。海難事故で父親を亡くした6才の「トウタ」と母親の無理心中から運良く助かった4才半の「ヒツジコ」。
漂着から2年強が過ぎた1997年、東京都の職員に発見され父島での生活がはじまる。無人島で確立した自我を秘めながら。
出版社/著者からの内容紹介では、
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2009年・ヒートアイランド化した東京。
神楽坂にはアザーンが流れ、西荻窪ではガイコクジン排斥の嵐が吹き荒れていた。
これは真実か夢か。
熱帯都市・東京をサバイブする若者を活写する長編。
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とあるが、3人の主役を取り囲む人間模様が主立ったもの、という印象。
確かに「”小説すばる”掲載の3作品をもとに構成した前半部分と、書き下ろしの後半をまとめて単行本化」というように合体作であるためか、それぞれのエピソードがもっとディテールがあっても良いのでは、とやや欲求不満な箇所もある。

著者の古川 日出男氏が「ジャンルをあえて言えば、疾走小説です」「平面的なひろがりだけでなく、東京の縦軸も描きたかった」と言うように、後半に行くほど「疾走」感が加速し、路地裏(裏世界)、空(鴉)、地下(傾斜人)と縦横無尽に展開する。

序盤で描かれるトウタとヒツジコの自我の確立期に、小学4年の始業式に島に赴任してきた教師・佐戸川俊一は「オブセッションと囁く」。

この後、キーワードとなる「オブセッション(Obsession)」は「妄想、脅迫観念」を意味する。古くは悪魔や悪霊による「憑依」の意味もあるが、現 代では「時に不合理とわかっていながら、ある考えや感情がしつこく浮かんできたり、不安なほど気掛かりになること」という精神医学・心理学的な精神の乱れ を指す言葉だが、物語全体に流れる力を良く表している。

繁殖しすぎた羊を殺さなくてはならない
純粋な日本人でなくてはならない
世の中の「常識」といわれる事は「オブセッション」。。。

ラストは「いっしょに東京を奪還するかぁ、ヒツジコ」と携帯電話越しに話し終わる。
東京の「オブセッション」を解放するという事かな。


主な登場人物
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トウタ
音楽を持たない少年
- 海の老人
- リリリカルド
- ピアス

ヒツジコ
無人島で地震の時に感じた「重力から放たれて自らの輪郭すら変化する、その状態の再現を求めて」ヒツジコは自分の体内に地震を起こすべく踊り続けたが、遠泳大会での事故以来、対象が外に向けられる。
- 中山 優高(遅刻ガール・ユーコ)
- 湊 冬子(寮生かつらガール・フユリン)
- 聖 バビロニア(全身全霊ガール・カナ)

レニ
新宿区新小川町・俗称レバノン生まれ、鷹匠の末裔レニ。
性別を自分の意志で場所ごとに選択する。生存戦略としての多性。
家族のカラス・クロイとともに傾斜人に映像銃で戦いを挑む。
- 居貫 正道(ポルノグラファー)

2005年8月4日木曜日

魔女は夜ささやく〈上〉〈下〉

ロバート・R・マキャモン、二宮 磬/翻訳(株式会社 文藝春秋、2003.8.30)

17世紀も末の1699年、新大陸(アメリカ)南部の町ファウント・ロイヤルで魔女が囚われたとの報を受け、魔女裁判を行なうべくやってきた判事アイザック・ウッドワードとその書記マシュー・コーベット。
証人から話を聞くほど“魔女”レイチェル・ハワースの有罪が確定してゆく中、マシューだけは彼女の無実を確信し、証拠探しに奔走する。

原題は「Speaks the Nightbird」。
物語の中でウッドワードがマシューに「夜の鳥」を引き合いに出して諭すところがあり、以後たびたび登場する。

登場人物
マシュー・コーベット:書記
アイザック・ウッドワード:判事
レイチェル・ハワース:魔女として囚われた女
ロバート・ビドウェル:ファウント・ロイヤルの創設者
アラン・ジョンストン:学校長
ベンジャミン・シールズ:医師
ニコラス・ペイン:民兵隊隊長
エマ・ネトルズ:ビドウェル邸の家政婦
グイネット・リンチ:鼠捕り
エクソダス・エルサレム:流浪の説教師