2010年7月28日水曜日

紫色のクオリア

うえお 久光(アスキーメディアワークス、2009/7/10)

SFが読みたい! 2010版、ベストSF2009国内編10位の作品。
帯のコピーに「人間が”ロボット”に見えるというー」とあり、いったいどんな話かと探りながら読み始めた。
あまりライトノベルは読んでいないが、これはなかなか面白かった。

中学生の視点で、量子力学、平行世界やシュレディンガーの猫を語ると中々解りやすく、また、日頃から「同じものを見ていても自分と他人では同じ物とは限らない」と思っているのだが、タイトルの”クオリア”が感覚質といわれる「頭の中で生まれる感じ」の事と本書で知った。

しかし、マナブはいったい何年生きたんだろう??

Contents
鞠井についてのエトセトラ
1/1,000,000,000のキス
If

主な登場人物
鞠井ゆかり:人間がロボットに見える、また、何でも修理できる。人でさえ。
波濤学(マナブ):殺人鬼に切断された左腕をゆかりに携帯電話で”修理”してもらったことで平行世界に通じるようになったゆかりの友達。
天条七美:ゆかりの幼なじみ、小さいときにジャングルジムで大けがしたが、ジャングルジムの部品で”修理”してもらった。
アリス・フォイル:JAUNTからゆかりを勧誘にきた天才少女

2010年7月20日火曜日

ジェネラル・ルージュの凱旋

海堂 尊(宝島社、2007/4/7)

田口&白鳥シリーズ第3弾。舞台はオレンジ救命救急センター。
「第2弾 ナイチンゲールの沈黙 」でがっかりしたので、ちょっと引き気味に読み出したが、これは面白い。当初の遣り取りが健在で引き込まれた。

話は、前作と同じ時期に起こっていたもう一つの物語で表裏の関係になる。
これを読むと、田口先生はこっちで忙しかったのね、と妙に納得。

不定愁訴外来の田口講師が委員長を務めるリスクマネジメント委員会に、救命救急センター部長の速水晃一が癒着しているという匿名の内部告発文書が投函される。
もてあました田口は、病院長、高階に相談するが、いつものごとくばばを引くことに。なんと田口を目の敵にする、エシックス・コミティ委員長の沼田と正面から戦うことになる。

第1作も言葉の遣り取りに魅了されたが、今回も同様。速水のアグレッシブフェーズが気持ちいい。
また、名前だけは最初から登場していた姫宮も、ドミノとあだ名されながらもポテンシャルの高さを見せる。早く碧翠院桜宮病院潜入編を読みたいなぁ。

最後の大惨事はできすぎだが、まぁいいかな。

2010年7月18日日曜日

ナイチンゲールの沈黙

海堂 尊(宝島社、2006/10/6)

出版社の紹介文から「第4回『このミス』大賞受賞作、25万部突破のベストセラー『チーム・バチスタの栄光』に続くメディカル・エンターテインメント第2弾!
バチスタ・スキャンダルから9ヵ月後、愚痴外来田口&ロジカル・モンスター白鳥コンビが帰ってきた!」ということで、期待して読んだ。
ただ、そうそう同じ病院内で事件性のある設定っていうのも厳しいだろうな、とは思っていたがなんとふつうに殺人事件が起こり、東城大学医学部付属病院の関係者が容疑者。

今回は、白鳥の学生時代の天敵、加納警視正。白銀の迦陵頻伽と呼ばれる伝説の歌手、水落冴子など、外部のキャラクターが増えている。
加えて、何となくいわくがありそうな桜宮病院の話などがちりばめられているが、どうも話が散漫で、テンポも悪く白鳥の切れも悪い。

前作が面白かっただけに残念感が強い。

ちなみに、迦陵頻伽(かりょうびんが)は上半身が人で、下半身が鳥の仏教における想像上の生物とのことだそう。

追記:
気を取り直して「ジェネラル・ルージュの凱旋」を読み始めたが、これはナイチンゲールの沈黙と平行して起きていた、東城大学医学部付属病院でのもう一つの物語。
姫宮も登場し、ちょっと面白くなってきた。

2010年7月10日土曜日

ベガーズ・イン・スペイン(ハヤカワ文庫SF)

ナンシー クレス、翻訳/金子 司ほか(早川書房、2009/3/31)

本書は、早川書房編集部により日本で独自に編集された短編集。

収録作品は、
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ベガーズ・イン・スペイン(1991年、訳:金子 司)
21世紀初頭、遺伝子改変技術により睡眠を必要としない人類「無眠人」が現れる。
あらゆる点において優れる無眠人は、一般人「有眠人」から妬みを買うことになる。
ヒューゴ賞、ネビュラ賞、アシモフ誌読者賞、SFクロニクル誌読者賞、ローカス賞2位などを受賞した作品。遺伝子操作により眠らない人種「無眠人」が社会に現れることによって起こる社会現象を描いた作品。

眠る犬(1999年、訳:山岸 真)
ベガーズ・イン・スペインの後半の時期のサイドストーリー。
不法に無眠技術を施された犬によって、有眠人キャロル・アンが体験した物語。

戦争と芸術(2007年、訳:金子 司)
地球人とテル人との戦時下。
ポーター大尉は実の母、アンソン将軍からの指令により、テル人が人類から盗み出した大量の人工物(芸術品)の調査に向かう。
宇宙もので親子問題もの。ローカス賞7位。

密告者(1996年、訳:田中 一江)
全員が共有する同じ現実によって絆を深める信じる異星が舞台。
妹を殺害した罪で存在自体を認められない「非実現者」として扱われるユーリ・ペク・ベンガリン。罪から解放されるために「密告者」となって「現実と贖罪省」の指示に従って内定任務をこなす。
最後の任務、といわれた相手は地球人。ある実験と妹の死がつながる。
ネビュラ賞、スタージョン記念賞、アシモフ誌読者賞、ローカス賞8位受賞。


思い出に祈りを(1988年、訳:宮内 とも子)
脳の手術によって延命できるが、記憶はすべて無くなってしまう。
ショートショート。

ケイシーの帝国(1981年、訳:山田 順子)
銀河帝国を失った男、ジェリー・ケイシーの物語。
こういうのをメタSFというのでしょうか。

ダンシング・オン・エア(1993年、訳:田中 一江)
バレエ界を舞台にした、ナノテクSF。
能力強化され5才程度の知力を持つ犬、エンジェルの目線で物語がはじまる。
能力強化が当たり前になりつつあるこの時代、ダンサーも強化によって高い運動能力を発揮していたが、ニューヨーク・シティ・バレエ団はあくまで生身にこだわった。
アシモフ誌読者賞受賞、ヒューゴ賞2位、ローカス賞2位ネビュラ賞候補。

2010年7月6日火曜日

チーム・バチスタの栄光

海堂 尊(出版社: 宝島社、2006/01)

第4回『このミス』大賞受賞作品。なんだけど、珍しく読むきっかけは医療もののミステリーに興味があって。
しかし、おもしろいこれ。キャラクターもいいし、文章もおもしろい。

ストーリーは、東城大学医学部附属病院の不定愁訴外来医師、田口講師が桐生助教授率いる天才外科チーム「チーム・バチスタ」で起こった連続術中死の原因調査を高階病院長に依頼されるところからはじまる。

高階の依頼で厚生省から派遣された白鳥と共にチームメンバー7名に対して様々な調査が行われるが、それぞれのキャラクターがハッキリしていて文章の緩急も上手いので全く飽きない。

早速、田口・白鳥シリーズが読みたくなっている。楽しみ。