2009年12月13日日曜日

悪意

東野 圭吾(講談社、2001/1/17)

加賀恭一郎シリーズの第4作目。単行本は1996年に双葉社から刊行。
特殊な関係をもつ3人の人間模様。物語は野々口の手記と恭一郎の語りで進む。
誰が殺したか、何故殺したか、読み進むうちに無理なくだまされる為の仕掛けが埋め込んである。

人気小説家の日高邦彦が殺された。発見者は妻の理恵と幼なじみの野々口。
恭一郎は野々口の手記に疑問を持つ。

登場人物
日高 邦彦:被害者。売れっ子の小説家である。
野々口 修:主に児童文学を書く小説家。元国語教師。日高の幼馴染みである。
日高 初美:日高の元妻。交通事故により他界。
日高 理恵:日高邦彦の再婚相手。

2009年12月12日土曜日

どちらかが彼女を殺した

東野 圭吾(講談社、1999/5/14)

加賀恭一郎シリーズの第3作目。1996年に講談社ノベルスから刊行。
親友に恋人を紹介したことが発端で殺人事件が起こる。
最後まで読んでも具体的に犯人の名が明かされていない為、文庫版には綴じ込みの解説が付いている。但しここでもヒントだけだが。また、文庫化の際、犯人を特定するための重要な記述を削除した為さらに難度が高くなっている。
(講談社ノベルス版が出た際には編集部に犯人が誰かについての問い合わせが殺到したらしい)

和泉園子は路上で絵を売っていた佃潤一と恋に落ちる。しかし親友、弓場佳代子に紹介したことが原因で潤一が心変わりしたと知り園子は絶望する。
電話の様子がおかしいと思った兄、康正がアパートを訪ねると園子は遺体となっていた。
一見して自殺の様に見えるが直感から他殺であると感じた康正は自らの手で犯人捜査を開始する。

登場人物
和泉 園子:被害者、死因は電源コードによるショック死
和泉 康正:園子の兄、豊橋警察署交通課に所属する警察官
弓場 佳世子:園子の親友、高校時代からの付き合い
佃 潤一:園子の元恋人。

2009年12月11日金曜日

眠りの森

東野 圭吾(講談社、1992/4/3)

単行本は1989年に講談社から刊行。
高柳バレエ団の事務所で男の死体が殺害される。容疑者は側で倒れていた団員、斎藤葉瑠子。
押し入った男を団員が正当防衛で殺害したように思われたが、そんな中、バレエ団の演出家、梶田康成が毒殺される。

登場人物
風間 利之:第一の被害者
梶田 康成:第二の被害者高柳バレエ団の演出家
斎藤 葉瑠子:団員、ダンサー・未緒の幼なじみ、最初の殺人の容疑者
浅岡 未緒:団員、ダンサー、加賀が恋に落ちる
高柳 静子:高柳バレエ団の経営者
高柳 亜希子:高柳静子の娘、高柳バレエ団のプリマ
柳生 講介:団員、ダンサー、葉瑠子の恋人
紺野 健彦:団員、ダンサー、警察のやり方に突っかかり独自に捜査をはじめる
中野 妙子:団員、ミストレス
森井 靖子:団員、ダンサー

2009年12月10日木曜日

卒業

東野 圭吾(講談社、1989/5/8)

新参者を読み加賀恭一郎のファンになったので、最初から読み始める。
単行本は講談社から1986年に刊行。本書は加賀恭一郎の大学4年生時代の話。

恭一郎の高校時代からの友人、牧村祥子がアパートの自室で死体となって発見された。
自殺と判断した警察に対し、他殺の可能性も考え恭一郎は捜査を開始する。

登場人物
相原 沙都子:恭一郎が想いを寄せる
金井 波香:第二の被害者。恭一郎と同じ剣道部員
藤堂 正彦:最初の被害者、祥子の恋人
牧村 祥子:第一の被害者
若生 勇:テニス部員
井沢 華江:若生勇の恋人
南沢 雅子:高校時代の恩師、茶道部の顧問

2009年12月8日火曜日

ジョーカー・ゲーム

柳 広司(角川グループパブリッシング、2008/8/29)

2008年度「このミステリーがすごい!」第2位作品。
ダブル・ジョーカーを読み、面白かったので前作にあたる本書を読んだ。
結城中佐率いる「D機関」の活躍。ダブル・ジョーカーはD機関を外側から見ているのに対して、本書は内側からの視点。

次の短編5編を収録している。
「ジョーカー・ゲーム」
スパイ疑惑のある親日家のアメリカ人・ジョン・ゴードンの自宅を捜索し失敗した陸軍大佐の武藤は、その事実をもみ消すためにD機関に探索を命じる。憲兵隊からD機関へ出向している佐久間陸軍中尉は指揮官として探索に出向く。

「幽霊(ゴースト)」
要人暗殺計画の首謀者と疑われているイギリス総領事のアーネスト・グラハム。
チェス相手、テーラー寺島の店員としてすっかり潜入している蒲生次郎の活躍。

「ロビンソン」
ロンドンで伯父から引き継いだ「前田倫敦寫眞館」の店主、伊沢和男の話。
ある日、伊沢は帰宅すると英国諜報機関にスパイ容疑で逮捕される。

「魔都」
上海憲兵隊に配属となった元特高刑事の陸軍軍曹、本間英司。
上官の及川政幸大尉から内通者を探る命を受けるがその最中に激しい爆発が起こる。爆発現場となった及川大尉の自宅を調査中、本間軍曹は特高時代に逮捕した記者に再会する。
その記者からD機関の存在と事件現場にD機関の人間がいたという話を聞かされる。

「XX(ダブルクロス)」
ドイツとソ連の二重スパイの疑いをかけられてD機関の飛崎弘行が調査していたドイツ人記者カール・シュナイダーが死体で発見される。

2009年12月5日土曜日

新参者

東野 圭吾(講談社、2009/9/18)

「このミステリーがすごい!」で、2010年度1位の作品。
今までこの作者は全然読んだことが無かった。
従って、加賀恭一郎シリーズの最新作って事も全然知らずに読み始めた。
物語は、日本橋に住む一人暮らしの40代女性が絞殺される。
日本橋署に着任したばかりの加賀恭一郎は、事件を追い見知らぬ土地を歩き回る。

2004年から2009年まで『小説現代』(講談社)に連載された全9話が収められており、各短編の関係者の視点で被害者像を浮き彫りにしてゆく。
事件解決に至る謎解きの組み立てもさることながら、恭一郎の関係者との関わり方や人情味のあるエピソードが読んでいて気持ちいい。
加賀恭一郎シリーズ、久しぶりにまとめ読みしたくなった。

・煎餅屋の娘
・料亭の小僧
・瀬戸物屋の嫁
・時計屋の犬
・洋菓子屋の店員
・翻訳家の友
・清掃屋の社長
・民芸品屋の客
・日本橋の刑事

2009年12月4日金曜日

ダブル・ジョーカー

柳 広司(角川書店、2009/8/25)

このミステリーがすごい!2010年版の2位にランクインした本作。
「ジョーカー・ゲーム」の第二弾、ということなんだが、そっちは読んでいない。
久しぶりに日本のスパイものを読んだが、面白い、あっという間に読んでしまった。

大戦突入前、諜報戦を冷徹に勝ち抜いてゆく結城中佐率いるD機関(実在した陸軍中野学校がモデルとか)の活躍を描く短編集。

「ダブル・ジョーカー」
D機関のライバルとして風機関が登場する。「ダブルジョーカーは要らない」とは、同じ組織にスペアはいらないということ。D機関の「死ぬな。殺すな。とらわれるな。」に対して「躊躇なく殺せ。潔く死ね。」を徹底的に叩き込まれた風機関がD機関を追い落としにかかる。
「蠅の王」
北支前線の野戦病院を訪れた慰問団。
モスクワのスパイ脇坂軍医は、慰問団の中にスパイ・ハンター「笑わぬ男」が紛れ込んでいるとの情報を得る。
「仏印作戦」
軍属として仏印に派遣された高林は、暗号電文の打電を任されるが、ある夜、何者かに襲われる。
「棺」
ベルリン郊外で起きた列車事故で死亡した日本人がスパイではないかとヴォルフ大佐は疑うが証拠が出てこない。
結城中佐の知られざる過去が明らかにされる一編。
「ブラックバード」
「D機関」で養成されたスパイ仲根は、ロサンゼルスに住み、アメリカ人の妻を持つ。
バードウォッチング趣味を装う彼の前に立ちはだかる壁。
以上5編を収録。

2009年11月29日日曜日

Another

綾辻 行人(角川書店、2009/10/29)

「気をつけて。もう、始まっているかもしれない」
という、帯のキャッチフレーズと表紙に惹かれて読み出した。
また、このミステリーがスゴイ!2010年版、3位でもある。

この物語は、学校に良くある七不思議「本当は誰にも言っちゃいけないんだけど」という26年前の「呪い」話から始まる。
26年前、夜見山北中学校の3年3組には「ミサキ」という生徒がいた。スポーツ万能かつ優等生でありながら、気さくなみんなの人気者だったミサキがある日事故にあい急死してしまう。
クラスメイトたちは善意から、卒業するまで今まで通りミサキが生きているかのように過ごそうと決める。
しかし、この行動が3年3組に「呪い」といわれる現象をもたらしてしまう。

1998年春。榊原恒一は、その3年3組に転校してくるが、何かに怯えているようなクラスの雰囲気に不審を抱く。そんな中、片目に眼帯をつけていつも一人でいる、美少女ミサキ・メイに魅せられた恒一は彼女に近づくが、クラスメイトの反応はますます不自然なものになっていく。
事情が解らないまま迎えたある日、クラス委員の桜木ゆかりが目の前で死を遂げる。それがきっかけとなっていっそう怯えの色を強くするクラスメイトたち。