2005年9月22日木曜日

東京アウトサイダーズ — 東京アンダーワールド2

ロバート・ホワイティング、松井みどり/訳(角川書店、2002/04/18)

危ない本『東京アンダーワールド』の作者、R.ホワイティングが書く待望の続編、アウトローたちをみる観察眼においてはこの人の右に出るものはないのでは。
みんなに読んでもらいたい一冊。
特に、自民党大勝という結果をもたらした検挙の後には。

詳しい内容については本書を読んでください。

...
pixel 目次
第1章 金儲けの達人
第2章 GI—氷河期、反米旋風
第3章 売春婦
第4章 詐欺師
第5章 ホステス
第6章 暴力団
第7章 いいガイジン

2005年9月10日土曜日

ジャンク・ファンク・パンク

野田 努(河出書房新社、2003/10/22)

本書は筆者が過去の雑誌、CDの解説などに書いた文章をまとめたもの。
第一章がレイヴ・カルチャー、第二章がデトロイト・テクノ周辺、
第三章がヒップ・ホップ周辺という構成。

ファンクという言葉につられて読み出した。
はっきり言ってレイブもテクノもヒップホップに付いてほとんどなにも知らないので最初は何の話だかちっとも分からず。。
勢いで読み進むうちに、第二章デトロイト・テクノ編。
アンダーグラウンド・レジスタンスのアルバム「インターステラー・フージティブス」が縁で始まるマッド・マイクの案内で見るデトロイト・テクノ。
この話は実に面白かった、モータウンの地、デトロイト。
デトロイト・テクノはP・ファンクやスティービーワンダーと同じメッセージを持っているという。
アズ・ワンことカーク・ディジョージオは、もしダンスカルチャーが二つの方向性に分かれているのなら、マーケット的に金になるロック化するダンスミュージックとマーケット的には期待できないアンダーグラウンドなジャズ/ソウルへと向かう方向だろう。
デトロイト・テクノは、後者の方向で音楽を感情表現とし常にソウルの問題を念頭に置いている。別名テクノ・ソウルとも呼ばれているそうな。
また、デリック・メイがヨーロッパ調の4っ打ちのテクノを聞いていたとき、その単調さに憤りを覚えながら「テクノっていうのはソウルなんだよ!」と怒鳴ったことがあるという逸話も印象的だった。

サン・ラやP・ファンクから続く、コズミック・テクノの解説で、「それは宇宙へのロマンスなどではない。あらゆる歴史的厳粛性から逃れた場所への強烈な夢想が彼らを宇宙に向かわせる」と。
そして、デトロイトの路上に描かれた「革命とは希望なき者の希望である」という痛さが音を作っている。

2005年9月7日水曜日

ロック・ミュージックの歴史〈上〉〈下〉スタイル&アーティスト

キャサリン チャールトン、佐藤 実/翻訳(音楽之友社 上巻、1996/10 下巻、1997/02)

内容(「BOOK」データベースより)
本書はアメリカの大学で実際に使用されているロック史のテキストである。ロックの誕生から現在までの歴史をたどりながら、さまざまなスタイル上の変遷や影響関係などを克明にあとづけ、代表的なアーティストを紹介。
随所に効果的なリスニング・ガイドを配置し、用語解説、索引なども完備するなど、テキストならではの細かい配慮がなされ、ロック・ミュージックの全体像を把握するには、これさえあれば充分、という内容である。

上巻では、ロック・ミュージックのルーツからカントリー・ロックのリヴァイヴァルまでをあつかう。下巻は70年代から、現在のモダン・メインストリーム・ロックまで。
---

その通りでした。

2005年9月2日金曜日

沈黙

古川 日出男(幻冬舎、1999/07)

「獰猛な舌」を具えて固有の顔をもたない、大瀧鹿爾(おおたき ろくじ)。
第二次大戦敗戦直後のビルマを逃亡中、日本人を捜すうちに、かつての上官・山室龍三郎大佐にあう。
山室の「おれは悪そのものであり、その悪を、生きとし生けるものに自覚させる」ということばに、鹿爾は心を乱す。
第一部、ビルマを逃走する大瀧鹿爾の書き出しがとても良く、一気に引き込まれた。
「獰猛な舌」とは「悪」とは。。

第二部となり舞台は現在の東京、「アビシニアン」で保健所を襲った秋山薫子がここからの主役。
ふとした切っ掛けで祖母・下岡三稜の姉・大瀧靜と知り合い、鹿爾の長男・修一郎が残した11冊のノート「音楽の死」の解読を進めるうち薫子は自分が、鹿爾、修一郎と同じ「獰猛な舌」を持つ家系と知る。

悪に対抗するものとして「音楽」がキーとなっている。
第一部では、山室大佐のことばに心を乱した鹿爾は、三つ目の村で聴いたモン族の若者が蜜柑の葉で奏でる「森の官能をそのまま響きに変えたような、豊饒さを具えた音楽の旋律」すら忘れてしまう。
強い悪にふれ、音楽が負けてしまったのか。

第二部以降は、失聴となった修一郎が残したノートから薫子はルコ(rookow)を知り追い求める。
「音楽は娯楽ではない。音楽は生存のための儀式である」とは、修一郎のメモ。

一方、小学生の時から「ぼくは闇だ」という薫子の弟・秋山燥(やける)。
人の悪意を解放する燥(やける)を近くに感じ、薫子は「純粋な悪意」を葬る。