2004年10月20日水曜日

マルドゥック・スクランブル

冲方 丁(ハヤカワ文庫)










The First Compression 圧縮
The Second Combustion 燃焼
The Third Exhaust 排気
からなる三部作。

24回日本SF大賞とベストSF2003第一位を獲得したSFアクション。
主人公のルーン・バロットは、偽造された自分の身分を詮索しないことを条件にマルドゥック・シティ最大の合法カジノのボス、シェル・セプティノスに囲われていたが、つい自分の身分証明を調べたことから、車ごと焼き殺されてしまう。
瀕死の彼女を救ったのは、シェルを尾行していた、ドクター・イーストとネズミ型万能兵器のウフコックだった。
軍事目的に開発された技術の有用性を示すため、ドクターとウフコックは、高度能力を得て蘇生したバロットを守りながらシェルの犯罪を追う。
前半は、かつてウフコックの相棒だったボイルド、そしてボイルドが殺しを依頼するかなり変態的な集団との戦い。
後半はシェルのカジノで、ポーカー、ルーレット、ブラックジャックそれぞれのディーラーとの対決。

冒頭の「なぜ、私なの?」という少女娼婦ルーン・バロットのつぶやきは、けっこうみんな漠然と感じているじゃないかな。

2004年10月11日月曜日

カルカッタ染色体

アミタヴ・ゴーシュ(DHC)

1997年度のアーサー・C・クラーク賞を受賞作品。
近未来のニューヨーク。アンタールが国際水利委員会の目録整理をしていると、カルカッタで消息を絶ったかつての同僚ムルガンのIDカードがモニターに現れる。
ムルガンの足跡を追うアンタールと、 ムルガンが追ったマラリア感染のメカニズムに隠されたもう一つの「意味」を探る。
“カルカッタ染色体”とは?

2004年10月7日木曜日

永遠の森 博物館惑星

菅 浩江 (ハヤカワ文庫)

日本推理作家協会賞受賞作。地球と月の重力均衡点、ラグランジュ3に浮かんでいる博物館惑星「アフロディーテ」を舞台にした9つの物語。

「アフロディーテ」は、音楽・舞台担当の「ミューズ」、絵画・工芸の「アテナ」、動植物の「デメテル」という三つの専門部署からなり、専用のデータベースを直接頭脳に接続した学芸員が、分析鑑定・分類収納保存を行っている。主人公の田代孝弘は「アフロディーテ」に搬入された物品を専門部署に割り振り、各部署間の調停役を果たす「アポロン」に勤務する学芸員。毎回無理難題を押しつけられる。

「美」をロジカルに追求する田代に対し、妻・美和子の「きれい」と感じる心、という対比によって描かれている。
大量の情報に翻弄され、本質が見えなくなっている現代を写しているよう。
あまりSFっぽくなく自然に読める。ここが菅浩江さんのいいとこかな。