古川 日出男(幻冬舎、2000/7/10)
「文字」という有限で制約の多いコミュニケーションの手段を捨て、リアルな感覚を研ぎ澄ますことによって得られる本当の理解をもとめる、ストイックな話。
出版社/著者からの内容紹介
「あなたには痛みがある」そう言った彼女は字が読めなかった。ぼくは激痛の発作におびえながらも急いで書かなければならない。僕と彼女の愛についての文章を。気高く美しい者たちの恋愛小説。
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古川日出男の綴る文章は面白い。
昔自分の中に在って今はどこかに仕舞い込んでしまった心搏が聞こえるような気がする。
あらすじ
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他者との協調ができないその小学生は、技術としての「ことば」を書物に求めるが、不足を感じ、ことばを超えた感覚による伝達を実践した。
そしてそれを猫から学んだ。
その少女は、親の都合で手放す事になった、元飼い猫「アビシニアン」との再会のため中学の卒業式後、過去と過去の自分を捨て公園に向かう。
4年間「アビシニアン」と一緒に猫として生きた少女は、文字を葬り去り、文盲となって森羅万象とともに新生を果たす。
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顔写真のスクラップで膨れあがったシステム手帳にシナリオを書き込む大学生。
原因不明の発作を持つこの大学生は、ダイニング・バー「猫舌」で「顔のない少年」の物語をエンマに語る。
エンマに「シバ」と名付けられた大学生は、物語を語ることによって二人の間でストーリーが養われ境界がなくなっていく、と感じる。
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「猫舌」のオーナー西マユコは、我が子の墓の前で蓮華を手に佇む文字を捨てた少女に出会う。
マユコは、安らぎを与えてくれる少女にエンマと名付ける。
家族を失ったマユコと全てを捨てた少女は、家族となり姉妹としての生活が始まる。
恐怖のシンボルが日付だったマユコは、エンマと暮らすことで文字を忘れるように日にちを忘れた。
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