2010年6月11日金曜日

夜明けの街で

東野 圭吾(角川書店、2007/07)

不倫ものに殺人トリック。と思っていたら全然違い。あっ、そうなるの。という感じでした。

一部上場の建設会社に勤務する渡部の部署に、仲西秋葉が派遣社員としてやって来る。
ひょんなことから不倫関係を持つようになるが、話を聞くうちに秋葉の家庭には特殊な事情があることを知る。
両親は離婚、その後母親は自殺。その直後に横浜の実家で父の愛人が殺されるという事件が起きた。その時効まで数ヶ月。

「不倫するやつなんて馬鹿だと思っていた。」という、書き出しを読んだ時点で既に作者の罠にはまってしまった。このあたりやっぱりうまいな。というか、俺が単純なんだな。

2010年6月10日木曜日

レイクサイド

東野 圭吾(文藝春秋、2006/02)

中学受験とそれに関わる人間模様をテーマにした物語。
中学受験を控えた子供を持つ家族四組が姫神湖の別荘に集まって合宿しているところへ、主人公・並木俊介が遅れて参加する。
しばらくして、そこへ俊介の部下、英里子がやってくる。
英里子は、俊介に頼まれ妻の浮気を調べていた。突然の来訪ではあったが若い女性ということで引き止められ泊まっていくことになる。事情がつかめない俊介が問いただすと、2時間後にはすべてがはっきりするという答え。
俊介は約束の場所で待つが英里子が現れないので、別荘に引き返すとそこで英里子は殺害されていた。
加害者は俊介の妻、美菜子だという。
本来なら、警察に連絡して。というのが当たり前だが、合宿参加者が皆そろって事件の隠蔽工作を積極的にすることに疑問を感じる俊介。


なんともドロドロとした人間関係と、世間ずれした感覚だが、ありそうな話でもあり、うーん。という感じ。

2010年6月8日火曜日

カッコウの卵は誰のもの

東野 圭吾(光文社、2010/1/20)

スポーツをテーマにしたサスペンス。
元日本代表のアルペンスキーヤー緋田の娘、風美は将来を有望視されているアルペンスキーヤー。
風美は勤め先である「新世開発スポーツ科学研究所」のサポートの元、世界を目指してトレーニングを続けている。
新世開発スポーツ科学研究所の研究者、柚木洋輔は、遺伝の組み合わせをパターン化し、同じパターンをもった親子ではその運動能力を継承する、ということを立証しようと、サンプルとして緋田親子に協力を頼むが断られる。

早い時点で、風美が実の娘ではなく何らかの事件に関わっていると言うことが明らかにされていくので、簡単なストーリーなのか、と思っていたらやはり東野作品。そんなわけ無く一気に面白く読め、内容の割にはすっきりとした読後感が残った。もしかするとこの前に読んでいる「禁断のパンダ」がすっきりしなかったからかも。

2010年6月6日日曜日

禁断のパンダ

拓未 司(宝島社、2008/1/11)

2008年『このミステリーがすごい!』大賞受賞作。
美食をテーマにしたミステリー。
神戸でフレンチスタイルのビストロを営む料理人、柴山幸太は、妻の友人と木下貴史との結婚披露宴に出席する。同じテーブルになった貴史の祖父、中島弘道はゴッド中島といわれた料理評論家だった。
その翌日、貴史の父・義明が営む会社に勤める松野庄司の刺殺体が神戸ポートタワーで発見される。

キャラクターの線が細いのと、中盤以降いっぺんに話がつながってくる流れのためか、はじめの方はぐいぐい引き込まれるという感じではなかったが、落としどころが見えてきてからはあっという間に読み切った。
一番最後のページがちょっとわからない。幸太の買い出しから貴史の話に移るところは、単純に貴史が弘道の血を引いている、という判断でいいのかな?

2010年5月29日土曜日

Self‐Reference ENGINE

円城 塔(早川書房、2007/05)

計算過程の存在しない計算→自然現象はまさにそのような計算として今この瞬間も進行している→自然現象を超える計算速度は存在しない→ならば自然現象として計算を行えばいい。という成り行きで進化しすぎた人工知性体が自然と一体化する。
そのイベントによって、時空間がぐじゃぐじゃになってしまう。大ざっぱに言うと、そのエピソードを第一部:Nearside、第二部:Farside の計18編を収録した物語。
言葉のリズム感がとてもいいのでどんどん読み進んでしまうんだが、ちょっと油断すると何の話だかちっともわからなくなる

2010年5月28日金曜日

天地明察

冲方 丁(角川書店、2009/12/1)

2010年本屋大賞受賞作、冲方丁といえば2003年に第24回日本SF大賞を受賞した「マルドゥック・スクランブル」を読んで印象に残っていた作家。
本作品が時代小説ということでちょっと驚いたが、16歳の時に主人公、渋川晴海の存在を知って以来いつか小説にしたいと思っていたとインタビューで語っている。

物語は、江戸時代前期に実在した渋川晴海を中心に進められた改暦を主題にしている。今でこそ暦といえば当然のように決まり切ったものと思っているがこれがバラバラだった時代、それまで日本で採用されていた「宣明暦」が正しくないことを実証し、初の国産となる「大和暦」を作り上げるという話。

渋川春海という名は後から本人が名乗った名で、もともとは安井算哲といい御城碁で将軍家に仕えた家柄。その実家は養子である義兄、算知が継いだので、領地である渋川を名乗るようになる。
算術、測地、天文学の才能に加え、囲碁で培われた人間関係に基づく情報収集力と、政治的な布石を駆使して成し遂げていくが、なんども挫折を味わっても新たな閃きで立ち直ってゆく強さは読んでいて励みになる。
「負けることには慣れている」という台詞がとても印象深い。

登場人物:
保科 正之/二代将軍秀忠の実子。文化による日本統一を目指して春海に改暦事業を命ずる。
水戸 光圀/春海を気に入り強力にサポートしてくれる。
酒井“雅楽頭”忠清/江戸幕府大老。春海に北極出地を命じる。
山崎 闇齋/神道学者。晴海の恩師。
本因坊 道策/春海を慕う囲碁の天才。
村瀬 義益/磯村塾を任された算術家。
関 孝和/春海の憧れ。「和算」の開祖ともいわれる日本数学史上の偉人。
えん/後妻。算術好きでからっとした性格は晴海のそれとは正反対。
建部 昌明/書家、北極出地に赴き晴海に天地明察の使命を課すことになる。
伊藤 重孝/御典医、北極出地に赴き晴海に天地明察の使命を課すことになる。

目次:
序章
第一章 一瞥即解
第二章 算法勝負
第三章 北極出地
第四章 授時暦
第五章 改暦請願
第六章 天地明察

2010年5月1日土曜日

カタコンベ

神山 裕右(講談社、2004/8/7)

本作品は、第50回江戸川乱歩賞受賞作。
「ケイビング(洞窟探検)」をテーマにしたミステリー。
主人公の東馬亮は、5年前、舞台となっているマイコミ平の地底湖ダイビング中に命を落としかけたが水無月健一郎の命と引き替えに救われる。しかし健一郎の遺体はおろか遺留品も発見されぬまま探索が打ち切られる。
いつか必ずマイコミ平の地底湖に戻って探索すると決めていたところに、マイコミ平に新たに発見された鍾乳洞の探検クルー募集を聞きつけ参加する。
現地に遅れて到着した東馬は、天候悪化が悪化したため先行したクルーが事故にあったことを知る。その中に命の恩人水無月の娘、弥生の名前を見つけ一人救助に向う。

過去に起こった事件を紐解く形でストーリーが進むが、登場人物の輪郭がやや弱く、あまり気持ちが入らない。そのためか、危機的な状況の緊迫感より、妙に話がうまく進む、という印象があった。