2010年5月28日金曜日

天地明察

冲方 丁(角川書店、2009/12/1)

2010年本屋大賞受賞作、冲方丁といえば2003年に第24回日本SF大賞を受賞した「マルドゥック・スクランブル」を読んで印象に残っていた作家。
本作品が時代小説ということでちょっと驚いたが、16歳の時に主人公、渋川晴海の存在を知って以来いつか小説にしたいと思っていたとインタビューで語っている。

物語は、江戸時代前期に実在した渋川晴海を中心に進められた改暦を主題にしている。今でこそ暦といえば当然のように決まり切ったものと思っているがこれがバラバラだった時代、それまで日本で採用されていた「宣明暦」が正しくないことを実証し、初の国産となる「大和暦」を作り上げるという話。

渋川春海という名は後から本人が名乗った名で、もともとは安井算哲といい御城碁で将軍家に仕えた家柄。その実家は養子である義兄、算知が継いだので、領地である渋川を名乗るようになる。
算術、測地、天文学の才能に加え、囲碁で培われた人間関係に基づく情報収集力と、政治的な布石を駆使して成し遂げていくが、なんども挫折を味わっても新たな閃きで立ち直ってゆく強さは読んでいて励みになる。
「負けることには慣れている」という台詞がとても印象深い。

登場人物:
保科 正之/二代将軍秀忠の実子。文化による日本統一を目指して春海に改暦事業を命ずる。
水戸 光圀/春海を気に入り強力にサポートしてくれる。
酒井“雅楽頭”忠清/江戸幕府大老。春海に北極出地を命じる。
山崎 闇齋/神道学者。晴海の恩師。
本因坊 道策/春海を慕う囲碁の天才。
村瀬 義益/磯村塾を任された算術家。
関 孝和/春海の憧れ。「和算」の開祖ともいわれる日本数学史上の偉人。
えん/後妻。算術好きでからっとした性格は晴海のそれとは正反対。
建部 昌明/書家、北極出地に赴き晴海に天地明察の使命を課すことになる。
伊藤 重孝/御典医、北極出地に赴き晴海に天地明察の使命を課すことになる。

目次:
序章
第一章 一瞥即解
第二章 算法勝負
第三章 北極出地
第四章 授時暦
第五章 改暦請願
第六章 天地明察

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