貴志 祐介(講談社、2008/1/24)
第29回日本SF大賞、大賞作品。
物語は、今から約千年後の日本の話。語り部で主人公の渡辺早季が子ども時代から35歳になった現在までの記録を更に千年後の同胞に向けて記した手紙という形で語られる。
渡辺早季は、この物語の暦で210年12月10日生まれ。
早季が暮らす千年後の世界は、超能力(呪力)を持った人間達が暮らす平和で争いの無い理想郷だ。子どもたちは大人から教えられることを疑うことなく鵜呑みにして成長する。情報過多の現代とは違い、ここでは徹底的に情報はコントロールされ子どもたちは管理される。管理できないと判断された子どもは、不浄猫により処分される。
人類は様々な争いを経ていたが、ある時より超能力を持った人間と持たない人間との対立による戦いとなる。結果、超能力を持ったもの達が勝利し、この理想郷を作るに至る。
しかし、この一見理想郷に見える社会は多くの代償により成り立っている。
超能者は一人で地球を破壊してしまうほどの力を恐れ、人間(の形をしたも)のには能力を使うことができない様に愧死機構という抑制力が埋め込まれた。また、人を傷つけた場合にもこの愧死機構が発動するように潜在意識に埋め込んだ。だから、人型の外敵に対しては為す術もないという欠点を持ってしまう。その災いの元(悪鬼や業魔と呼ばれる)を絶つ為に、不浄猫ってのが出てくる。(でも、指示した人の愧死機構は発動しないのかしら?)
上下巻で1000ページに及ぶ分厚い本なので、もっぱら家で寝る前に読んだ。
上巻はこの物語の世界観の説明が主で、これが中々かったるくて進まず、また、下巻にはいると随分物語は動くようになるのだが、不気味な虫だのグロテスクな生き物の描写が多く、どうも夢見が悪くなる本だった。但し、言わんとしていることは身近に思い当たることもあり、教訓的で興味深い。
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