長谷 敏司( ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション、2009/8)
主人公のサマンサがボロボロになって死を迎えるプロローグから始まる。この表現が壮絶。
物語は、サマンサが余命半年と宣告されてから死ぬまでの葛藤を描いた物語。
西暦2083年、ニューロロジカル社の共同経営者にして研究者のサマンサ・ウォーカーの研究室。脳内に疑似神経を形成することで経験や感情を直接伝達する言語 ITP (Image Transfer Protocol)の研究・開発の為、世界で初めてITPテキストによる創造試験体、仮想人格「wanna be」を量子コンピュータ上に立ち上げる。
サマンサは、自らの脳にITPを移植した際に、親の代の移植手術が原因の不治の病で余命半年と知る。
どんなに科学が進んでも「死」は必ずついて回る。また、科学が進んでいるが為に生きることに執着し、苛立ち、足掻く。
物語が進むにつれて、サマンサと「wanna be」の間に交流が生まれる。
サマンサの死が「wanna be」のシステム上からの消去=死となる関係でのやり取りは、心境の変化(サマンサ)と認識の変化(wanna be)が面白い。
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