2005年6月29日水曜日

エロス-もう一つの過去-

広瀬 正(集英社文庫)

もしもあのとき何々だったら、というテーマで書かれた時間ものSF。

歌手生活37周年記念リサイタルをひかえた大女性歌手、橘百合子と電波探知機を発明した片桐慎一博士の<現在>と37年前の<過去>。
もしかしたらあったかもしれない<もう一つの過去>と交互に物語が進む。
昔、ハインラインの「時の門」の解説書「時の門を開く」を読んだのが切っ掛けで広瀬正を読み始めた。
なぜかエロスについてはあまり印象に残ってなかったが、単純にSFと言うよりは時代小説のようなところが、自分にとってはあまり引っかからなかったのか、と感じた。

なにせ当時コテコテのSFに興味があったので、昭和10年代の東京の様子を詳細に描かれても読み飛ばしたんだろうなぁ。
しかし、今回読み直してみたら詳細な「時代のディテール」がこの作品のポイントなんだと今頃思う。
ちっとは本読んでいる成果が出てきたのかな。

エロスというタイトルの設定は音楽畑の著者らしい。

2005年6月27日月曜日

ダーウィンの剃刀

ダン・シモンズ(著)嶋田 洋一、渡辺 庸子(翻訳)(Hayakawa novels)

主人公のダーウィン・マイナーは、ローレンスとトルーディー夫妻だけの小さな保険調査会社で事故復元調査員をしている。ある日愛車NSXでフリーウエイを走行中、スモークガラスのベンツE340に銃撃されたことから命を狙われている事を知る。
この裏には、カリフォルニア各地の路上や工事現場で頻発する保険金搾取を狙う巨大組織の存在があった。
カルフォルニア州検事局主任女性捜査官シドは、その組織の解体するべくダーウィンに協力を求める。

カーチェイスからはじまり、グライダー対ヘリコプターの空中戦、最後はスナイパー同士の心理戦へと続くサスペンス・アクション。読み進むにつれ主人公ダーウィンの経歴が明らかになり期待が高まる。
サイドストーリーに登場する逸話がなかなかおもしろく、映像化したら結構グロだろうなと思うところでも重くならずに読み進む事ができる。

タイトル「ダーウィンの剃刀」は14世紀の論理学者オッカムのウィリアムによるものとされる原理「オッカムの剃刀」のパロディー。この原理は「むやみに実体の数を増やしてはならない。」 という事らしい。
因みに、文中では
「通常、他の全ての条件が同じなら、もっとも単純な解決法が正しい解決法である。」オッカム
「通常、他の全ての条件が同じなら、もっとも単純な解決法は愚かな解決法である。」ダーウィン

登場人物
ダーウィン・マイナー 事故復元調査員
ローレンス・スチュワート 保険調査会社の経営者
トルーディ ローレンスの妻
シド・オルスン 州検事局の主任捜査員

2005年6月20日月曜日

エイリアンvsプレデター

マーク・セラシーニ(著)鎌田 三平(訳)(竹書房文庫)

人工衛星が、南極大陸で異常な熱の放射を観測。
解析の結果、氷の下600mに超古代の巨大ピラミッドが眠っていることが判明した。

億万長者の企業経営家、チャールズ・ウェイランドは、歴史に名前を残す「世紀の発見」に向け世界中の科学者・考古学者からなる調査隊を組織し南極大陸に向かう。
プレデターがエイリアンを狩るという設定だが、どうして?、という疑問を持たなければそれなりに楽しめる。
特に小説では気持ちの悪いものを見なくてもいいというメリットは大きい。

また、エイリアンシリーズを見ていれば分かるという仕掛けも随所にあってファンにはうれしい。
例えば南極の古代遺跡調査を依頼する、ウェイランド社は、映画「エイリアン」に登場した貨物船ノストロモ号っを派遣した多国籍企業「ウェイランド=ユタニ・コーポレーションの元の名前。

最後は母船に回収されたプレデターの死体の胸を破ってエイリアンが出てくるというエンディングだが、エイリアンと何かが融合して、新しい怪物を登場させるといういつもの決まりからすると、次はまた特殊なのが出てくるのかしら、と。

登場人物---
アレクサ(レックス)・ウッズ
環境保護運動家で寒冷地探検のガイド
セバスチャン・デ・ローサ
奇抜な説を唱え、学会から追放されかけた考古学者
チャールズ・ウェイランド
億万長者の企業経営家
グレアム・ミラー
古代建造物の年代を測定する化学工学者

2005年6月18日土曜日

守護者(キーパー)

グレッグ・ルッカ(著)、古沢 嘉通(翻訳)(講談社文庫)

ボディガードのプロと脅迫者との攻防を描くグレッグ・ルッカ初の長編小説。
妊娠中絶の賛否という重たいバックグランドでおこる殺人予告。
ガールフレンドの堕胎に付き添ってウイメンズライフケアクリニックを訪れた主人公のアティカス・コディアック。
病院前では"堕胎は殺人だ"というプラカードを掲げて「声なき者の剣」のメンバーが過激に活動している。
女性医師ロメロに「私と娘を保護してもらいたい」と頼まれ引き受けたことから始まるアクション巨編。

結構弱い主人公をフォローすべく後半登場する、私立探偵、ブリジット・ローガン。
彼女がなかなか良い。
彼女が主人公の番外編にも期待。
期待大。

登場人物
---
アティカス・コディアック
フェリス・ロメロ ウイメンズライフケアクリニック
ルービン
デイル
ナタリー・トレント
エリオット・トレント
シャナサン・クロウエル 声なき者の剣代表
ロサノ NYPD
スコット・ファウラー FBI
ブリジット・ローガン
---

2005年6月8日水曜日

宿敵−Code Name : GENTKILL

ポール・リンゼイ(著)、笹野 洋子(翻訳)(講談社文庫)

FBI捜査官殺しと病院脅迫事件、二つの事件をマイク・デブリンが規則違反の単独捜査で追う。
このマイク・デブリン捜査官シリーズの著者、ポール リンゼイは元FBI捜査官。
前作のシリーズ第1弾「目撃−Witness To The Truth」を書いた時は現職だったらしい。

全編を通して出てくる官僚主義に対する抵抗(良い意味での)が気持ちいい。
特にビル・シャナハン特別捜査官の考えつく事は最高です。
久々に読み終えてスカッとする小説だった。