円城 塔(早川書房、2007/05)
計算過程の存在しない計算→自然現象はまさにそのような計算として今この瞬間も進行している→自然現象を超える計算速度は存在しない→ならば自然現象として計算を行えばいい。という成り行きで進化しすぎた人工知性体が自然と一体化する。
そのイベントによって、時空間がぐじゃぐじゃになってしまう。大ざっぱに言うと、そのエピソードを第一部:Nearside、第二部:Farside の計18編を収録した物語。
言葉のリズム感がとてもいいのでどんどん読み進んでしまうんだが、ちょっと油断すると何の話だかちっともわからなくなる
2010年5月29日土曜日
2010年5月28日金曜日
天地明察
冲方 丁(角川書店、2009/12/1)
2010年本屋大賞受賞作、冲方丁といえば2003年に第24回日本SF大賞を受賞した「マルドゥック・スクランブル」を読んで印象に残っていた作家。
本作品が時代小説ということでちょっと驚いたが、16歳の時に主人公、渋川晴海の存在を知って以来いつか小説にしたいと思っていたとインタビューで語っている。
物語は、江戸時代前期に実在した渋川晴海を中心に進められた改暦を主題にしている。今でこそ暦といえば当然のように決まり切ったものと思っているがこれがバラバラだった時代、それまで日本で採用されていた「宣明暦」が正しくないことを実証し、初の国産となる「大和暦」を作り上げるという話。
渋川春海という名は後から本人が名乗った名で、もともとは安井算哲といい御城碁で将軍家に仕えた家柄。その実家は養子である義兄、算知が継いだので、領地である渋川を名乗るようになる。
算術、測地、天文学の才能に加え、囲碁で培われた人間関係に基づく情報収集力と、政治的な布石を駆使して成し遂げていくが、なんども挫折を味わっても新たな閃きで立ち直ってゆく強さは読んでいて励みになる。
「負けることには慣れている」という台詞がとても印象深い。
登場人物:
保科 正之/二代将軍秀忠の実子。文化による日本統一を目指して春海に改暦事業を命ずる。
水戸 光圀/春海を気に入り強力にサポートしてくれる。
酒井“雅楽頭”忠清/江戸幕府大老。春海に北極出地を命じる。
山崎 闇齋/神道学者。晴海の恩師。
本因坊 道策/春海を慕う囲碁の天才。
村瀬 義益/磯村塾を任された算術家。
関 孝和/春海の憧れ。「和算」の開祖ともいわれる日本数学史上の偉人。
えん/後妻。算術好きでからっとした性格は晴海のそれとは正反対。
建部 昌明/書家、北極出地に赴き晴海に天地明察の使命を課すことになる。
伊藤 重孝/御典医、北極出地に赴き晴海に天地明察の使命を課すことになる。
目次:
序章
第一章 一瞥即解
第二章 算法勝負
第三章 北極出地
第四章 授時暦
第五章 改暦請願
第六章 天地明察
2010年本屋大賞受賞作、冲方丁といえば2003年に第24回日本SF大賞を受賞した「マルドゥック・スクランブル」を読んで印象に残っていた作家。
本作品が時代小説ということでちょっと驚いたが、16歳の時に主人公、渋川晴海の存在を知って以来いつか小説にしたいと思っていたとインタビューで語っている。
物語は、江戸時代前期に実在した渋川晴海を中心に進められた改暦を主題にしている。今でこそ暦といえば当然のように決まり切ったものと思っているがこれがバラバラだった時代、それまで日本で採用されていた「宣明暦」が正しくないことを実証し、初の国産となる「大和暦」を作り上げるという話。
渋川春海という名は後から本人が名乗った名で、もともとは安井算哲といい御城碁で将軍家に仕えた家柄。その実家は養子である義兄、算知が継いだので、領地である渋川を名乗るようになる。
算術、測地、天文学の才能に加え、囲碁で培われた人間関係に基づく情報収集力と、政治的な布石を駆使して成し遂げていくが、なんども挫折を味わっても新たな閃きで立ち直ってゆく強さは読んでいて励みになる。
「負けることには慣れている」という台詞がとても印象深い。
登場人物:
保科 正之/二代将軍秀忠の実子。文化による日本統一を目指して春海に改暦事業を命ずる。
水戸 光圀/春海を気に入り強力にサポートしてくれる。
酒井“雅楽頭”忠清/江戸幕府大老。春海に北極出地を命じる。
山崎 闇齋/神道学者。晴海の恩師。
本因坊 道策/春海を慕う囲碁の天才。
村瀬 義益/磯村塾を任された算術家。
関 孝和/春海の憧れ。「和算」の開祖ともいわれる日本数学史上の偉人。
えん/後妻。算術好きでからっとした性格は晴海のそれとは正反対。
建部 昌明/書家、北極出地に赴き晴海に天地明察の使命を課すことになる。
伊藤 重孝/御典医、北極出地に赴き晴海に天地明察の使命を課すことになる。
目次:
序章
第一章 一瞥即解
第二章 算法勝負
第三章 北極出地
第四章 授時暦
第五章 改暦請願
第六章 天地明察
2010年5月1日土曜日
カタコンベ
神山 裕右(講談社、2004/8/7)
本作品は、第50回江戸川乱歩賞受賞作。
「ケイビング(洞窟探検)」をテーマにしたミステリー。
主人公の東馬亮は、5年前、舞台となっているマイコミ平の地底湖ダイビング中に命を落としかけたが水無月健一郎の命と引き替えに救われる。しかし健一郎の遺体はおろか遺留品も発見されぬまま探索が打ち切られる。
いつか必ずマイコミ平の地底湖に戻って探索すると決めていたところに、マイコミ平に新たに発見された鍾乳洞の探検クルー募集を聞きつけ参加する。
現地に遅れて到着した東馬は、天候悪化が悪化したため先行したクルーが事故にあったことを知る。その中に命の恩人水無月の娘、弥生の名前を見つけ一人救助に向う。
過去に起こった事件を紐解く形でストーリーが進むが、登場人物の輪郭がやや弱く、あまり気持ちが入らない。そのためか、危機的な状況の緊迫感より、妙に話がうまく進む、という印象があった。
本作品は、第50回江戸川乱歩賞受賞作。
「ケイビング(洞窟探検)」をテーマにしたミステリー。
主人公の東馬亮は、5年前、舞台となっているマイコミ平の地底湖ダイビング中に命を落としかけたが水無月健一郎の命と引き替えに救われる。しかし健一郎の遺体はおろか遺留品も発見されぬまま探索が打ち切られる。
いつか必ずマイコミ平の地底湖に戻って探索すると決めていたところに、マイコミ平に新たに発見された鍾乳洞の探検クルー募集を聞きつけ参加する。
現地に遅れて到着した東馬は、天候悪化が悪化したため先行したクルーが事故にあったことを知る。その中に命の恩人水無月の娘、弥生の名前を見つけ一人救助に向う。
過去に起こった事件を紐解く形でストーリーが進むが、登場人物の輪郭がやや弱く、あまり気持ちが入らない。そのためか、危機的な状況の緊迫感より、妙に話がうまく進む、という印象があった。
登録:
投稿 (Atom)